インナーセルフ療法のすすめ

 「インナーセルフ療法」とは私が催眠イメージ面接法とフォーカシングを組み合わせて用いてきた心理技法に勝手に命名したものです。でも私のオリジナルな部分はほとんどありません。もうすでに心理治療者の方で部分的に似たようなやり方を用いている場合が増えてきているようです。またとても有名なる「インナーチャイルド療法」とかなり似通っています。でもインナーチャイルド療法とは大きく二つの点で違っているためあえてインナーセルフ療法と名づけてみました。

 インナーチャイルド療法はとても素晴らしい心理治療技法ではありますが、実際の子供時代に限定してしまって、それだと子供イメージ以外のものを拾い上げにくくなってしまう点と、その内界から立ち上がる子供イメージへのアプローチが指示的で内界の住人をこちら側からコントロールしていこうとする意図が強すぎるきらいがあります。

 インナーセルフ療法では実際の子供時代に限定した(インナーチャイルド)イメージだけでなく、より広く内界にいるもう一人の自分(インナーセルフ)としてどんなイメージでも取捨選択せず、例えば動物、人形、大人、や影など様々なイメージをまずそのまま受け止め展開を見ていこうとします。そしてフォーカシング的態度とその技法を用いて出来る限り指示的でないアプローチをとるようにするのです。

 私がこのような技法を用いるようになったヒントは色々あったのですが、その中のひとつに、催眠療法の権威である鶴光代先生が1992年に現代のエスプリの中に出された事例。対人緊張に悩むOLのAさんに「自分がわかる」というイメージ暗示で自分は広い部屋のなかに一人でいて身を固くして座っている。自分であることはわかるが他人を見ているようでピンとこない。そのイメージが次第に展開されて確かに私自身だと実感が生じ泣きはじめた。自分のことはわかっているのだけど分かりたくない気持ちがあって、ずっと目をつぶってきた。初めて自分を見ることができたような気がする・・・などとありました。

 それを読んで私は「ああ(私の面接経験からも)心理面接での自分イメージとの関わりは治療的にとても意味があるなと」思ったのです。

 もうひとつ、かなり昔に来談されたある若い女性クライアントの報告してくれた印象的な夢もインナーセルフ療法のヒントとなりました。彼女の夢に市松人形にそっくりな小さな少女が出てきたのです。そのちょっと気味が悪くて嫌な感じの市松少女は彼女が歩くと、どこまでも彼女の後をついてくるのです。そのうちクライアント自身は階段を登ったのですが、後を追ってきていた市松少女は小さな身体ゆえになかなか階段が登れません。それでもなんとか階段を登って彼女に近づこうとして苦心している少女。彼女は思わず近寄りその市松人形そっくりな少女を抱えあげたのです。その時の感触は、なんとも暖かいようで、なんともいえない不思議な感じがしたそうです。

 その夢を聞かせてもらった私は深く感動しました。彼女はこの夢(の導き?)によって、その市松人形に象徴されるような自分の、今まで受け入れがたかった側面を抱きしめる(受け入れる)ことができたといえるでしょう。

 このようにみんなから教えてもらったことや学んだ事をヒントにしたり繋ぎ合わせたりして試行錯誤していく中でまとまってきものを「インナーセルフ療法」と名づけてみたのです。

 インナーセルフ療法のやり方の骨子を簡単に述べると、まず軽い催眠誘導を用いてクライアントのイメージ活動ができるだけ活発になるようにします。次に、より丁寧にやるときは「地面に穴があってそこを覗くと地下室に階段が続いています。その階段を降りて行って地下室にいるもうひとりの自分に会ってみましょう」など指定して、階段を降り地下室に入っていくようリードするのです。そしてそこで登場してくるる自律的イメージに対して主にフォーカシングの技法を用いてクライアントと共同でアプローチをしていくのです。

 煎じ詰めれば「心の中にいる自分イメージにフォーカシング的手法で関わっていく」ということなので、それを元に様々に応用展開していけます。ですからフォーカシングを用いたりしない心理治療者でもすでに同じことをやっている場合が多々あるわけです。また逆にフォーカシングをやっていたら自然発生的に自分イメージが現れ展開していくこともフォーカシング技法をよく用いている方なら経験済みなはずです。

 インナーセルフ療法でははじめから「もうひとりの自分に出会ってみましょう」などとイメージを意図的に指定して、クライアントの自律的な自己イメージがよく展開するように働きかけていくわけです。私はこの手法を長年用いてきて、これに型を与えひとつの心理面接技法としてパターン化すれば、自分に向きあうだけのゆとりのあるクライアントなら適応可能でブリーフセラピーとして用いてもかなり効果的だし、とてもわかり易い技法なので特に催眠療法を用いている心理面接者の技量アップに貢献できるし、と思って「インナーセルフ療法」として提唱することにしました。

★詳細は固定ページ:『インナーセルフ療法』にあります。