セルフリラクゼーション法

実際に入る前に

 このセルフコントロール法は、マスターするにあたって、訓練を初めから自分一人で行うことも出来るように考えて説明しました。しかし出来ることならスポーツなどをマスターする時と同じように、経験者について習いながらマスターしていく方が効率的です。

 自分一人でトレーニングを行う時の目安として、心配事や悩み事があるにせよトレーニングを行う時には、その心配事をいったん置いておくことが出来る余裕を作れるかどうかが基準となります。もちろん初めは落ち着かなく集中できなくとも、習熟してくるにしたがって上手にリラクレーションが出来るようになり、それにより悩みや不安が軽減してくる場合もあります。

 自分の問題が置いておけないくらいになった場合は信頼できる人の援助を得ることが必要です。

 もちろんそのような援助を受けながらリラックス法を行う事は非常に役立ちます。

 暗示やイメージを利用するにしても、やはりある種の訓練ですから、出来るだけ毎日定期的に練習する方が上達は早くなります。でも練習をやらねばならないなどと義務感が強く出るようなら気が向いた時だけ、面白いぶんだけやるようにした方がかえって効果的です。

 一回のセッションの時間は、初めのうちは五分~三十分くらいの範囲で行い、なれてくれば自分のペースで臨機応変に行うと良いでしょう。

 リラクレーションがうまくいくと眠気が起こってくる場合があります。特に睡眠不足の場合や、疲労がどこかにあった場合などはそうなりがちです。そのような場合にはまず睡眠をたっぷりとることが心身にとって先決です。

 習熟してきたら訓練をしばらくやって、ウトウトして、またトレーニングをやってまたウトウトして。などとやってみるのも効果的です。

 また、就寝前にベッドや布団の中でやってそのまま眠りに入ると寝付きも早く熟睡が出来るようです。

 リラクレーション状態に入った時には、有機体全体としてバランスを取ろうとするホメオスターシスの働きが活発化するので、心身の解放運動(自律性解放)が起こりやすくなります。(例えば金縛りなどもこの部類に入るようです)これにより様々な反応が起こり、まれにですが訓練中に体に変調があったり、不安が起こったりする場合があります。

 これは、心身が良い方向に動いたのではありますが、自我が受け止めかねる場合もあるので、あまり不安が強い場合などは訓練をやめてトレーナーと相談しながら行うことが必要です。

【完全弛緩のリラックス法】
(基本パターン)

1)完全弛緩の姿勢

 仰向けに寝転がり(基本的には、広々とした草原に伸び伸びと寝転がった感じのような姿勢)手足を開き気味にする等、自分が一番楽に居られそうな姿勢をとる。枕をするしないも、楽かどうかで決める。訓練を行っている途中で窮屈を感じたりした場合等は、体を動かしたりして出来るだけ楽な姿勢に直す。

 また、体が冷えすぎないように毛布やタオルケット等をかけるなど室温により調節すると良い。就寝前の訓練は、布団やベッドの中で行っても良い。

 寝転がった時、出来るだけ安心出来るような場所や空間であるよう工夫する。

2)閉眼・点検

 眼を閉じたら体が楽かどうか、自分の体を点検する。ゆっくり全身に注意を巡らしてみる。特に体を預けている、床や布団やベッド、クッションなどと触れ合っている部分の感触を味わい、もっと床などに全身をまかせるようなつもりになってみる。

3)腹式呼吸

 まずは胸いっぱい息を吸い込み、大きなため息をつくようなつもりで息を吐く。2~5回くらい行う。

 次におへその回りに注意を向けその辺りから下の下腹部が大きく膨らむように息を吸い込み、息を吐く時にその膨らんだお腹の力を抜くようなつもりで吐いていく。回数は臨機応変に。

 〈鼻から深く、下腹が大きく膨らむように吸って、ゆっくりゆっくり鼻から吐いていく。苦しくない程度に大きくゆっくりやる。なれて来るにしたがい腹式呼吸に上達し、深くてゆったりとした呼吸が出来るようになって来る〉

 体の感覚に注意を向けてやる。鼻から出入りする呼吸や、上下するお腹等に注意を凝らす。注意がそれるのが当たり前だが、それに気が付いた時にまた体の感覚に根気よく注意を向ける。しだいに体の感じに注意を向けている時間が長くなってくる。

4)心の準備・確認・切り換え(フォーカシングの応用)

 このセッションは、呼吸法の前に行ってもいいし、また、はしょって次の訓練に移ってもよい。

 「今どんな感じかな?今の気分はどうだろう?」とそれに注意を向けてみる。何かあるようなら外側から見るようなつもりで観察する。何ともない感じや、言葉になりにくい説明しがたい感じもしばらくそのまま注意を向け観察する。

 良い感じ(楽だとか落ちついた感じとか)や何ともない感じの場合はそれをしばらく味わい、次のセッションに移る。

 悪い感じ(イライラする・焦り・不安・緊張・心配事が浮かぶ・周りが気になる・このトレーニングを上手くやらなければ・トレーニングをやっても無駄では・興味が持てない)などの場合が見つかったらそれにも大切な意味があるので、その感じを「いけない」などと否定しないで、またその中に入って考えるという事もしないで外側から見るようなつもりで観察しながら受け止め、出来るだけ味わう。

 この所は非常にポイントとなるところで、ある程度観察し、受け止めた後その感じ全体を空想の中で、例えば引き出しにしまっておくとか、壷にでも入れておくとか、心の中の遠くに置いておくつもりなどの様に、ひとまず置いておこうと操作をします。そして置き終わったら大きく呼吸をして荷物を背中から降ろして一休みする時のようなつもりで、肩の荷を下ろした自分を想像してみます。

 このイメージ操作は後のセッションの中で、集中がそれた時に行ったりしても有効です。

 この心の切り替え作業を何度か行っても、どうも集中できない、落ち着けない。などの感じが強く出てくる時は、無理にこのリラックス法のトレーニングを行わずに、ある程度気持ちが落ち着いていられる時に練習を重ねると良いでしょう。それでも集中しにくいとか、感じがつかめない場合は自己訓練の限界ですので、専門のトレーナーに付いてもらって練習を重ねると一人で行うよりずっとコツがつかみ易くなります。

 このセッションは、マイナスの感情や感覚などへの向かい方のトレーニングも含まれています。例えば良くあるのが、気がかりな事がありその事が気になって頭から離れない。考えれば考えるほど整理が付かず、どうしていいか分からなくなり、不安や心配も強くなってくる。などと言う時に心の切り替えが出来るようになり、気がかりな事に振り回されないような心の持ち方の訓練になります”

【自律訓練法+ヨーガの完全弛緩のポーズ】

 ここでは体の各部位に注意を向けながら自己暗示を行い、体の弛緩を行っていきます。心構えとして、自分の体を暗示によって思い通りにすると言うのではなく優しい目をむける感じで「体さんご苦労さん、休憩してください」等のような暗示を行う。

 暗示どおりの反応が出るかどうかは後回しにする。訓練を行っているとなんとなく気持ちが落ち着くとか、楽な感じやいい気分になったり安らぐ感じやボーッとする等の感じがあればうまく行っていると言えます。

 初心者の場合、暗示を行っている時間は五分から三十分の間くらいを大まかな目安にしますが。基本的にはその人のホメオスタシス(自己回復力)が良く働くような休息の状態に入れば良いわけなので熟練してくれば臨機応変に自分に合うように応用できます。例えば就寝前にベッドや布団の中でやってそのまま眠ってしまうなど。

① 手足のリラックス(重感・ゆるむ感じ)

 まず、右肩から右指先までに「どんな感じかなぁ?」と注意を向け観察し。どんな感じ感覚でもそれによく注目する。
次に右腕が弛み切ったら、とろけてしまったらどんなになるか等の想像をしてみる。

 『右腕がゆるーむ、ゆるーむ、ゆるーむ、おもーい、おもーい、おもーい』と繰り返し暗示する。

 この時暗示どおりの反応がある無しにこだわらないで、今の右腕の感じを良く観察したり味わったりするほうが大切。

 次に左腕、右足、左足と右腕の時と同様に行う。

②首・肩・あご・頬・額・頭・頭の中心などのリラックス

 首、肩周りに注意を向け観察し『肩、首、アゴがゆるーむ、ゆるーむ、ゆるーむ』と順番に暗示していく。次に頬、目、額なども適当にゆるーむ、ゆるーむ、ゆるーむ。と暗示をしていく。顔の表面全体がゆるーむ、ゆるーむとやってもよい。

 次に、頭の中がゆるんでいく、柔らかくなっていく、溶けていくようなイメージで頭の中もゆるーむ、ゆるーむ、ゆるーむ。と暗示していく。

 眉間にしわを寄せて考えるなどと言うように、またアゴにも気づかないうちに力が入っている場合があります。

③手足の温感

 再び右腕に注意を向け、右腕のありのままの感じを観察してみる。そして温泉かお風呂にでも浸かっているようなイメージで『右腕があたたかーい、右腕があたたかーい、右腕があたたかーい』と繰り返し暗示していく。

 もちろん日向ぼっこをしていて、お日様が優しく腕を暖めてくれるなどの気持ちよい温かさのイメージなら何でも良い。

 この時も重感の暗示の時と同じで反応がある無しにこだわらないで、今の右腕の感じを良く観察したり味わったりするほうが大切。

 次に左腕、右足、左足と右腕の時と同様に行う。

④腹部温感

 みぞおちのあたりや、下腹など適当に注意を向け、腹式呼吸を行う。深く大きく吸ってゆっくりゆっくりはく。適度に繰り返した後普通の呼吸にもどり、特にはく息の時に『お腹がゆるーむ、お腹がゆるーむ、ゆるーむ』と暗示する。

 次に『お腹があたたかーい、お腹があたたかーい、あたたかーい』と繰り返し暗示する。この時は日向ぼっこをしていて、優しい太陽がお腹を暖めてくれるイメージとか。また、例えば腕の疲れないようなかたちで手のひらをお腹に乗っけて、そこから温感がお腹全体に行き渡るように暗示するなども良い。

⑤額の涼感

 額に注意を向け『額がさわやか、額がさわやか、額がさわやか。額が涼しい、額が涼しい』と暗示していく。
額を風がスーッとなでていくようなイメージをしてみる。

⑥体全体のリラックス

 全身に注意を巡らし、全体を感じてみる。また全身が溶けてなくなったようなイメージをしてみる。また、①からの暗示などのどれかを適当に繰り返してみたりする。

 頭寒足熱と言うような感じの状態や、手足がなくなったような感じや、また手足がノビノビと広がっていくような感じなどが深いトランス状態に入ると出てきたりします。でもこうならなければならないのではありません。

⑦覚醒

 数を三つまで数えながら『ひとーつ気持ちよーく目が開く、ふたーつ気持ちよーく目が開く、みーっつ気持ちよーく目が開く』と暗示した後目を開ける。そして両腕を頭の上のほうに伸ばしてノビを足先までする。

 覚醒は臨機応変に、ゆっくり長めにやったり、簡単に済ましたりと使い分けても良い。

 暗示への反応も個人個人で違いがあり、リラックスしていく感じも個人差があるので、このやり方にこだわり過ぎず。要するに気持ちよく、深くやすらげれば良いわけですからそれを基準にして、工夫し、自分なりに応用していけば良いでしょう。

【イメージリラクゼーション】
(基本パターン)

 ここではイメージする事を利用してより深いリラクレーション状態に入り込むトレーニングを行います。

 イメージする時の感じとして、空想ファンタジーの中で癒しの場所に行くようなつもりとか、心の深いところにある自然治癒力の働きがある場所(中心に)行くようなつもりや、その働きがイメージとなって自分を包んでくれるよなつもり(それは安らぎの場所のような感覚)で行うと良いでしょう。

 でも基本的には自分が落ち着くとか楽だとか、安心できるとかを感じられるようなイメージなら何でも良いのです。

 イメージする時に浮かぶイメージは、簡単な空想からよりリアルにありありとした段階のイメージまで個人差が出てきます。理想としてはリアルなイメージが良く、練習を重ねているとそうなっても来ます。でも(個人個人の反応にはその人自身の大切な意味があるので)リアルイメージにこだわる必要はまったくありません。自分が自然に空想できる範囲でトレーニングを行っていく事が大切です。(トレーナーと相談しながらやると、自分のペースや動きの意味をつかみやすくなって、確信をもってトレーニングが出来ます)

 興味深く空想できたり、おもしろく空想できれば大成功です。

①姿勢

 椅子やソファなどに深くゆったりと、出来れば背中や頭をもたせかけたりしてくつろいだ姿勢で行います。もちろん完全弛緩のリラクレーションやその応用の椅子姿勢のリラックス法の続きで行う事も効果的です。

閉眼

 目を閉じて、自分の体の状態を(姿勢)点検して窮屈なところなどないかどうか調べて直したりします。体を預けているものと(ソファゃ、椅子、床など)触れ合っている体の部分に注意を向け感触を味わったり、もっと体を預けてみるようなつもりになってみる。

②腹式呼吸

 おヘソのまわりに注意を向け、そのあたりまでもが大きく膨らむように息を吸い込む。出来るだけ深く大きくゆっくりと吸い込んで、いっぱいになったら、ゆっくりゆっくり吐いていく。はく息とともに お腹や胸や肩、腕を脱力します。ため息をつく時の感じです。ホッとした後の大きいため息のつもりでやりましょう。
呼吸練習の回数や時間は臨機応変に行う。

③数の逆算と階段を降りていくイメージ

 足元に地下に降りていく入り口があり、降りていく階段がずっと下に続いている。一番下には地下道か洞窟がありそれを抜け出すと、広々とした美しい自然(例えば海や草原)が広がっている。その自然の中でくつろぎ、やすらぐ、一休みする。と言うようなパターンでイメージしていきます。

 まず数を二十~十くらいからゼロまで逆に数えながら、その階段をゆっくりと一歩一歩踏みしめながら降りていきます。階段を踏みしめるようなつもりで、足指にホンの気持ち程度力を込めて感じを出してみましょう。

④地下道・トンネルイメージ

 ゼロまで行って洞窟に降り立ったら、見回すような感じで暗い洞窟の中を感じ取り、遠くにある小さな明かりの出口を目指していきます。

 歩いて行く感じや、乗り物に乗った感じや、飛んでいく感じなどのイメージで出口に近づきます。出口は次第に大きく明るくなってきます。

⑤風景イメージ(その他の自分がくつろげそうな場所)

 地下道を出ると自然が広がっていて、気持ちのいい青空であったり、例えば草原なら緑が青々としていたり、お花畑があったり、またそこで日向ぼっこをしているつもりや、昼寝でもしているつもりで、しばらく自然の中でくつろぐ所をイメージします。

 この時には自分の心のイメージの世界に、自分自身の安らぎの場所がもしあったら、と空想するとか、また自分をしっかり支えてくれたり守ってくれる所(自然治癒力の働き)がどこかにあって、こういうイメージをする事でその働きとつながる事が出来てくる。とか思ってみる。

⑥呼吸法やリラックス暗示

 ここでまた、腹式呼吸を行ってみたり自律訓練法をやってみたりしてみると、一段と深い感覚が得られたりします。

 また、イメージする事に面白味を感じる場合などは、大地が自分を支えてくれているとか、海岸で寝転がっていると夕日が海に沈み夕焼けがきれいで、次には星がきらめき始め、夜中になり満天の星空を眺めているとか、そこで一晩ぐっすり眠る。などとイメージして休息するのも良い。

⑦覚醒

 数を一つから三つか五つくらいまで数えながら目を開ける。

 『ひとーつ気持ちよーく目が開く』と暗示しながら手を握ったり開いたりして動かし『ふたーつ気持ちよーく目が開く』と暗示しながら手足を屈伸させたりする。『みっーつ目が開く』で目を開けたら手足をグーンと伸ばし全身の伸びをする。その後少しそのままの姿勢でボンヤリしながら体がどんな感じか調べたり、今の気分を味わう。

☆ここに載せたイメージ誘導のパターンはあくまでも一つの例です。このとおりにイメージできなければ駄目と言うものではありません。やはり基本は、楽に気持ちよくやすらげることですから、その範囲でイメージの世界に自分なりのやすらぎの場所を見つける、作り出すつもりで工夫をすると良いでしょう。

☆他者催眠などで一度他の人からイメージ誘導してもらうと、深いリアルなイメージ体験が出来やすく、イメージするコツが非常に良くわかるようになります。

☆ヨーガや野口体操、その他の柔軟体操の後や、マッサージや他のボディーワークを受けた時などのように体が実際にほぐれた直後にリラックス法を行うと一段と深い状態に入れます。


時代性にマッチした催眠と催眠療法の工夫と研究